伝説を食べる実験

トラブルに巻き込まれた親戚が相手側をたかりだしたという。私はそんなことはいけないと、代わりに謝罪をしに行った。すると相手は3300円で話をつけてやる、と言うのだ。私はその態度に激怒した。「それくらいの金額なら払うとでも思うのか、ふざけるなお前らもうここには住めなくなるぞ」と怒鳴った。戦いが始まった。
相手側は紙の人形を送り込んできた。殴っても殴っても起き上がってケタケタ笑う。きりがないので車で逃げた。すると警察が追いかけて来、私はたまたま見つけた洞窟へ点となって入った。
洞窟の入口には「これはもちろん女性器の隠喩ですが、なにを想像するのもあなたの自由です」という立て札があった。私は気にせず、奥へ奥へと進む。点になった私は、時間と空間を越えて移動することができた。辺りには、チョコレート、かもめ、といったものの概念が象徴的に浮かんでいた。それらを一つずつ確かめ、進んだ。
しばらくして気づくと、私は別の人間になっていた。例えば子供で、集団で管理されていた。その時その集団は「国の国」という所の、伝説、民話を食べるという男の元で伝説を食べる実験をしていた。トレーに乗った肉団子とカレーのようにみえるものが配膳された。カレー(のような何か)には虫のようなものが無数混ざっていた。褐色で、米粒に節がついたような形。艶があり柔らかそうだ。男はそれを指し「これは妖精であり国を作ったいわゆる君たちの祖先である」と言った。
はあ、なるほどと思いつつどうしても食べる気がしなかった。吐き気が身体中を巡った。周りを見ると不思議そうな顔をしながらも無言で食べている。私は仮病を使って残すことにした。組織を管理するものにそう伝えると、難なく許された。
ところが例の男が去ろうとする私にたちはだかった。厳しい表情で私の顔を覗き込んだ。私はええと、実は…と弁解しようとした。しかし男はそれを遮りなるほど、それなら構わないと言った。そして周りを憚りながらこう耳打ちした「次は、一人で来なさい」。私は壁に掛かった伝承一覧の図を眺めながら、次までに伝承に詳しくならなければと思った。
[2011年8月28日の夢]


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子供の頃から見た夢をよく覚えているほうで、夢の不条理で不思議な世界に興味を持っていた。ある日図書館で面白科学的な本を読んでいたら、こんな文章が目に飛び込んできた。「明晰夢の見方」。明晰夢を見るために習慣づけるべき項目が並んでいた。
私は必死にメモをとり、その日から明晰夢をみるために項目のことがらを実行した。やるべき事は大まかにいうと「目覚めたら夢の内容をじっくり思い出す」「詳細に記録する」「常時これは夢かそうでないかを意識する」の3つだ。
しばらく続けるうちに、夢の中で「これは夢か?」と考えることができた。そしてさらにしばらくして、「これは夢か?」の後に「夢だ」と気づくことができた。
夢の中で夢と気づく体験はなかなか面白いものだった。しかしかといってなんでも思い通りになるわけではないし、これはつまるところ「夢だと気づいている夢」を見ているのにすぎないのでは?と考えるようになった。それはそれで楽しいこともあるだろうし、続けていたら「夢だと気づき内容をコントロールしている夢」をみることだってできたかもしれない。でも当時の私は明晰夢への興味をなくしてしまった。訓練によってたくさん覚えていられるようになった夢そのものの方が強く私を惹き付けた。
大人になってからも時折夢の記録をつけた。ツイッターを始めてからは、ツイートで記録した。紙やPC、携帯、スマホに記したぶんは残っていない。紙はなくしたし、パソコンや携帯は壊れ、iPhoneは上海で盗まれたからだ。ツイッターに残した分はまとめてプリントアウトした。これもいつかなくすかもしれないので、このブログを始めました。