幼児退行エレベーター

 大きな建物にホテルといくつかの商店が入っていて、私はそのホテルの一室に閉じ込められた。部屋にはほかに誰もいなかったが、私は「精神薄弱者と暮らさなければならないなんて、あんまりだ」と強く思っていた。ベッドの端が乱れていて、それを狂人のしわざと考えていた。ある時目覚めると私の顔を1人の男が覗き込んでいた。私はそれが堪らなくなって部屋を飛び出した。

 駐車場へ出ると、私は柴犬ほどの小さな人間を連れていることに気がついた。小さな人間はまるで人形のように動かなかったし、ともすると本当に人形だったのかもしれないが、私には生身の存在感をもって映っていた。私はその小さな人間を抱えて歩いた。

‌ 「外」へ行くためには、「隙間」を通る必要があると考えた私は、車を運転して壁に寄せた。別に閉ざされてもいないその狭い空間を「隙間」として通り過ぎるために。小さな人間を抱えて車から降りるのは難儀だった。腰ほどの高さの壁の上にひとまず小さな人間を乗せた。手を離すとそれは力なく倒れ地面へ落ちかかった。咄嗟に掴みあげる。硬直していたが、生暖かい人間の感触をはっきりと感じた。再び壁に、今度は広さのある所に置くと、それははっきりとした足取りで歩き出し車のドアに挟まって動けないでいる私を置いて行ってしまった。一人になった私は、外へ向かうのは無理なんだと強く感じ、建物へ戻ることにした。

‌ 建物の1階にはスーパーがあり、花の苗が売られていた。コールラビや芽キャベツといった珍しい植物が揃っている。よく見ると貼り紙があり「売れ残った種を勝手に植えてしまいました。すみません」と書いてあった。私はミニニンジンの苗を撫でた。

‌ 建物を上に進んだが、なぜだかホテルフロアには上がることが出来ない。私が見つけた階段もエレベーターも、それより上の階へは繋がっていない。そこで私は、通りがかりの給食のおばさんに助けを求めた。無言のおばさんに給食用エレベーターに乗せられ、薄暗く狭い空間にうずくまり上へ進む。私はその間に子供の姿になっていたようだ。子供になった私が部屋に戻ると、例の男が服を着替えさせベッドに寝かしつけた。
[2016年4月の夢]

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一年以上このブログの存在を忘れていて、久しぶりの更新です。私はとにかく忘れっぽいのだが、携帯を変えたところ2台前のデータと同期され、メモ帳によくわからないメモがたくさん出てきて大変驚いた。その中に夢メモがあり、ブログのことを思い出したわけです。

最近は自分の夢にあんまり注意が向けられていなかったが、今回ブログの記事やメモを読み返したらその時の夢の雰囲気が思い出されてとても楽しく、やはりたまには記録したいなあと思い直した。またところどころ描写があいまいなせいでイメージを思い出すのに時間がかかるところがあり、工夫したいなと思っている。