アヒルなんかどうでもいいや

   「今年の11月は2週目に118日と110日があって、ということは今日は節分だね」。我々は二手に分かれて豆をぶつけ合った。こちらは3人なのに向こうは20人くらいいたため、ぶつけられる量がすごかった。

   その後通りを歩いていると、白いヒゲの男がアヒルを3匹引き連れて倉庫に向かうのが見えた。懸命に後を追うアヒルが面白く、様子を見守ることにした。すると白ヒゲの男が倉庫に入ったところで、物陰から黒い男が現れてまだ倉庫に入れていないアヒルを3匹とも掴んで黄色い車に乗り込み、走り去ってしまった。一瞬の出来事だった。

   白ヒゲの男はすぐに飛び出してきた。私は黄色い車だ、と伝え一緒に追いかけることにした。坂を登って下ると黄色い車が停まっていて、降りてきた黒い男を2人で捕まえた。警察もやって来た。私はなぜか自分の事のようになって、「なんて事するんだ、絶対に許さないからな」と黒い男に怒鳴り、掴みかかろうとした。

   すると警官が「あなた、この人がどんな気持ちでアヒルを盗んだか考えてみなさいよ」などと言う。途端に馬鹿らしくなった私は、アヒルなんかどうでもいいやと思うのだった。

2011119日の夢]


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   私の夢には現実の知り合いがほとんど出てこない。たとえ出てきても、あまり重要な役どころではない。

   もしいつも知り合いしか出てこなくて、状況も普段の日常に沿ったものだとしたら、夢と現実の区別がますますつかなくなるだろう。

   子どもの頃、朝、親がなかなか起きない私の両脇を抱えて寝室からリビングへ引きずった。リビングの手前で降ろされた私は、それでも起き上がることができずにそのままうつ伏せの体勢で寝ていた。夢半ばの意識で、どうして最後まで運んでくれないんだろうと思っていた。

   ようやく起き上がってから、運んでなんかいない、自力でそこまで来て寝ていた、と親に言われてすごくびっくりした。あまりに驚いたので、実は夢だったという「引きずられる感触」は今でもはっきりと覚えている。