無性生殖した話

   頭の中で組み立てた遺伝情報を体内から卵子に送る方法で妊娠してしまった。無性生殖ではあるが、遺伝情報を新しく組み立てているのでクローンにはならない。

   この世界では時たまそういうことが起きるが、あまり喜ばしいこととはされていなかった。思考を自制できないからだ、と考えられているのだ。実際に私も、ぼんやりしていたらうっかりやってしまったという感じだった。

   私は誰にもそのことを知らせず、山の上の病院で子供を産む。無性生殖の子は検査項目が多いので、しばらく入院することになった。私だけが退院させられ、一人下山した。

   何をしていても子のことが気がかりで、毎日仕事が終わると真っ先に見に行った。何もできないのが辛かった。やがて子に対する気持ちや自分への苛立ちを一人で抱えていることに耐えられなくなり、親や周りに出産したことを言いたくなった。

   無性生殖で生まれた子は、自制心のない親の子供として差別を受けることが多い。子が様々な不利益を被る可能性を考えると、耐えられなかった。そこで私は、人工知能を用いた会話式シュミレーターに相談してみることにした。

   シュミレーターは、考えうる不利益を提示した上で、「周りに話すべき」との解答を出した。人間の女性の姿をしたシュミレーターのホログラムキャラクターが笑顔で語りかける。「差別自体は無くならないが、権利拡大のためにより良い世界を作るべきだ」。また、「あなたの母親はきっと喜んでくれる」と付け加えた。

   私は途端に興ざめした。なぜ人工知能に倫理を語られなければならないんだと思った。また自分が差別主義者と糾弾されたようで、悔しかった。プログラムのスイッチを切り、ログを消去して病院に向かう。子供を連れ出して、遠い所へ行こうと思った。

201922日の夢]


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   昨日の記事から遺伝子のことを考えていたせいか、今朝はこんな夢をみた。続き物みたいで面白く感じたので、タイムラグなしでアップすることにした。

   私の夢は大抵変なことが起きるけれど、このように考えていた内容が反映されることも多い。影響されやすく素直な人間なんだろうなと我ながら微笑ましく思う。