やはり海は嫌いだ(1)

友人のプロジェクトにつきあうためラオスに行くことになった。しかし世界は配列を変え時空的に歪んでしまい、物理的な方法ではたどり着けない。

いろんな場所へ流れるように飛ぶ。一冊のノートから九州へ。九州から南へ、北へ。植物だらけの道を歩く。葉の巨大な植物が繁っている。傘として使ってみたいと言うも、ここら辺はあまり雨が降らないから、と友人。

そうこうしているうちに着いたのは港で、私たちは客船の一つに乗り込んだ。広い空間にたくさんの人がいる。今流行っているという不思議なあそびが繰り広げられていた。何人もが縦に列になり前の人の肩につかまってぐるぐる回るというもので、ここはそのあそびをする場所として人気があり、外からテレビ番組も取材に来ていた。

私はあそびが難しく感じたので部屋の隅でじっとしていた。隅は柵で仕切られており、一、二歳の子供が入れられていた。その子供達がみな私に突進してくるので堪らなかった。なんとか遊んであげようと思ったものの、子供の頭が次々膨らんで鼻水を噴き出すので、慌てて部屋の外に出た。友人はそのあそびを続けていた。

一つの船室にたどり着く。大きな窓があり男とその幼い娘がいた。畳張りで、まるで普通の民家のようだった。窓には障子がはめ込まれていたが、紙は貼られておらず、海の様子がよく見えた。もうここは船ではなく、海の上の家だと思った。

「やはり海は嫌いだ」男がそう言い、おもむろに障子に紙を貼り始めた。外はすっかり見えなくなり、私たちは障子からもれるわずかな光を見つめながらじっとしていた。突然男が障子の紙を勢いよく剥がす。障子の向こうにあったのは見知らぬ土地だった。海でも港でもなく、草の生えた広い地面のただ中だった。建物もいくつか見えた。私たちが移動したのではなく、周りの水が一切消え草が生え、建物が建設されたのだ、と私は主張した。その上でなぜ工事の音に気づかなかったのだと男を責めた。男は少し残念そうだった。(続く)

2011118日の夢]


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2つ前の記事で書いた児童文学は、「王さまシリーズ」で知られる寺村輝夫作の「消えた2ページ」だということがわかりました。存在していて本当に嬉しい。教えていただいた方、ありがとうございました。

子供の頃、「王さまシリーズ」「こまったさん」「わかったさん」と寺村輝夫作品をよく読んでいたので、今となってはどうして気づかなかったのか不思議。

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「消えた2ページ」※児童文学覚書より