2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

虚像の家族

私はある田舎の倉庫で働いていた。あたりは農園で、店といえばチーズと缶詰と油と酒を売る小さな商店があるくらいの農村に位置していた。昼の休憩時間にその商店で買ったチーズを食べて煙草を吸うのが私のささやかな楽しみだった。ある日の休憩中、いつもの…

地中は日が当たらない

角度によって見え方が変わる厚紙を使ったモザイク立体画の展示を見に行った。正面から見ると女性の顔だが横から見ると街の景色が見えるといった感じのものだ。夢中になって見ていたが、ふと隣に力士がいることに気がついた。私は力士に「向こうにあなたを描…

ともに生きる

線状に広がる世界の番人だが、ふだんは鹿・やぎ・羊を連れ人を引き車で運ぶことを生業にする男がおり、その日も人を運んでいたがとつぜん気が狂い、俺はやっぱり運ぶのをやめる、勝手に行けばいい、何も信じたくなくなった、鹿とやぎと羊とともに生きると言…