子供たちの御本尊

   二メートルほどの台の上に母親の亡骸を横たえながら少年が「いまや彼女の事を見つめるものは誰でもなく全ての人である上(かみ)の様、ただ一人であり全ての」と呟き、また別の少年は「枯葉、生きざまと死、死にたい」と叫び繰り返し閉じた扉にぶつかり続けていた。たくさんの人たちとバスに乗り夜の住宅街を期待の空気の中眺めていると、路上に作業服を着た人間を先頭にR2-D2C-3POがそれぞれ反対方向から十体ずつ列をなして規則的なリズムで現れたので、バスの中は「ロボットの行進だ!」という歓声でいっぱいになった。二手から集まったロボット達は作業服の人間の指示で住宅の一軒一軒に入ってはあらゆる機械類に電気を通して回っていった。私をはじめ、バスの中の人たちはその様子を真剣に見つめていた。


   しばらくした後、R2-D2が二体ほど暴れ出した。何かを叫びながら、回転しながらでたらめに走り出した。あたりは混乱したが、作業服とほかのロボット達が暴れる二体を取り囲むようにして引き揚げると、何事もなかったかのように静かになった。私たちはバスを降りてついさっきまでR2-D2が暴れていた家に入った。家の中はあらゆるものが散乱してそれらを子供達が囲っていた。私は物々を一つ一つ手に取り「これは誰のかな」すると一人ずつ手を上げるので渡す。全てを配った。部屋の隅に小学生と中学生の二人組が立っていて、傍にしつらえた棚をにこにこと眺めているので、「片付けたんだね、偉いよ」と言うと中学生「ものは」小学生「大切に」中学生「しなければ」小学生「なりません」どうやら二人は同一人物であるらしかった。二人が示す壁のスクリーンをみると、ドラえもんが映っている。ドラえもんは語り出した。「ものにはそれぞれの家があります。家に帰してあげましょう」どうやらここには子供しかいないのだ。この家以外もそうだろう。一帯をロボット達が管理し、子供達の教育の様な事もしているらしい。子供達の態度を見ると、スクリーンのドラえもんは彼らにとって先生というより御本尊またはビッグブラザーのようであったが。


   私たちはバスに戻る。宿に向かうのだ。集合時間ちょうどに最後の一人が乗り込むと、ガイドがその一人に激怒した。「あなたどういうつもりですか。迷惑を考えなさい」遅れていないはずなのに、集団行動なのに、なぜだろう。そう考えていると、ガイドは車内の時計を指差しながら「残念でした!」すると時計の示す時間が一気に二十分進み、「ほら、あなたは遅れていた」それで皆は納得したのだ。私も「ははあ、あの最後の人が乗り込む一瞬で二十分進んだのだな、迷惑な話だ」などと思った。宿に着く。ガイドがいないと思ったら奥から着替えて出てくる。この宿の経営者でもあるらしかった。横には彼女の夫らしき男性も一緒であった。彼女は八朔という名で、かつて女優をしていたという。「そのため常に芝居がかった言動なのです」夫は言う。八朔は果物の八朔の説明をわざとらしいまでの芝居口調で話しだす。内容が前後したり同じところを繰り返したりしながらそれはいつまでも続いた。わけがわからない。

20111023日の夢]


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ブログの存在を忘れていた間に、上海から台北に引っ越しました。