2018-01-01から1年間の記事一覧

やはり海は嫌いだ(1)

友人のプロジェクトにつきあうためラオスに行くことになった。しかし世界は配列を変え時空的に歪んでしまい、物理的な方法ではたどり着けない。いろんな場所へ流れるように飛ぶ。一冊のノートから九州へ。九州から南へ、北へ。植物だらけの道を歩く。葉の巨…

イタリアランドの思い出

イタリアランドというテーマパークに行った。知ってる場所がつなぎ合わされた世界で、こことここがつながっているのか、と探索していたら、見つけることができた。乗り物は有料だが、入場は無料らしい。なのですごく混んでいた。何に並んでいるかわからない…

虚像の家族

私はある田舎の倉庫で働いていた。あたりは農園で、店といえばチーズと缶詰と油と酒を売る小さな商店があるくらいの農村に位置していた。昼の休憩時間にその商店で買ったチーズを食べて煙草を吸うのが私のささやかな楽しみだった。ある日の休憩中、いつもの…

地中は日が当たらない

角度によって見え方が変わる厚紙を使ったモザイク立体画の展示を見に行った。正面から見ると女性の顔だが横から見ると街の景色が見えるといった感じのものだ。夢中になって見ていたが、ふと隣に力士がいることに気がついた。私は力士に「向こうにあなたを描…

ともに生きる

線状に広がる世界の番人だが、ふだんは鹿・やぎ・羊を連れ人を引き車で運ぶことを生業にする男がおり、その日も人を運んでいたがとつぜん気が狂い、俺はやっぱり運ぶのをやめる、勝手に行けばいい、何も信じたくなくなった、鹿とやぎと羊とともに生きると言…

人を殺したので見てほしい

私は知らない男性の運転する車に乗り、山奥の道を進んでいました。知らない男性は、自分のことを私の恋人だと言うのです。そして、人を殺したので見てほしいと、こちらを見ずに告げました。私は怯えきっていました。山道の交差点のような場所に死体はありま…

ホタルイカ液の命乞い

ウォッシャー液から細かいホタルイカが飛び出す車に乗った。走っていると少し開いた窓から色とりどりのホタルイカが飛び込んできて、窓ガラスの端に張り付いた。赤と緑とピンクのホタルイカがならんでこっちを見ていて、私は外に出すためにコップですくおう…

独裁者金太郎

独裁者金太郎は斧を担ぎおかっぱ頭で手ぬぐいの様な前掛けをしていた。独裁者金太郎は冷淡で残忍だった。「あなた方の有能な兄に対する様に私に慕い従いなさい」と独裁者金太郎は斧をふるい語った。独裁者金太郎にも従わない者がいた。かよちゃんである。独…

シナモン判定

手のひらサイズのフクロウと生活していた。とても懐いていて、私の膝の上でうつ伏せになって眠るのが好きだった。フクロウはこの世界の歴史を映像で見せてくれた。言葉や文字ができていく過程を楽しく理解することができた。昔のような村社会だったらお前は…

土も食えない

近未来の日本では土地という土地が墓で埋め尽くされそのほかの区画も非常に小さくなっていて、家を建てる場合は、既にある建物から突き出すように作る。もし土地を使うと墓をたくさん潰すことになり、大勢の子孫に賠償しなければならなくなる。 私は植物が…

牛人間の祭

時間と空間の操作によっていろんな場所の古い文化をディスクにデータ化し保存したところ、各データの中で時間が進んでしまった。保存された文化はほかの文化との交わりや淘汰なしに、閉ざされた空間で独自の進化を遂げていた。あるデータの中ではミノタウロ…

子供たちの御本尊

二メートルほどの台の上に母親の亡骸を横たえながら少年が「いまや彼女の事を見つめるものは誰でもなく全ての人である上(かみ)の様、ただ一人であり全ての」と呟き、また別の少年は「枯葉、生きざまと死、死にたい」と叫び繰り返し閉じた扉にぶつかり続け…

小菊たちもこうきちんと扱う事で自我を持ちます

ある原始的な生活を送る村はかつて集団失踪事件があったという。未解決のその事件の謎を解き明かすために、村人たちの集合的無意識を解析する調査が行われた。結果はある何かの記号。誰もその意味はわからないという。 そこで私は試しに、ユリの蕾をひっく…