湿気が高いアル

うどんを打ちながら誰かと闘ってたんだけどどうしても足をとられてしまって敵わなくて「空手もムエタイもダメだ!中国行ってくる!」と叫んで高洲という名の三角州地帯に辿り着いてマクドナルドでスープを頼んだら虫が入ってて中国人の若い女性店員に言ったら「湿気が高いアル」で流されて「クッソー!!」ってなった。
[2011年5月30日の夢]

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武田泰淳の『蝮のすえ』を読み返した。戦後の上海で代書屋をしながらもやもやを抱える男がすがってきた美人とその死にかけの夫と共に日本へ引き揚げるまでのあれこれを描いた小説だ。
男のもやもやもいいが、美人がすごくいい。辛島という豪傑にいいようにされながら、病気の夫を抱えながら、主人公をたぶらかし意のままに操ってちゃっかり日本行きの船に同行させる。会ったばかりの主人公に好きだと言ってキスしたり、寝たきりの夫に別れると言ってヒステリーを起こしたりとずるいところだらけなのだが、必死な姿に健気さを感じてしまう。
戦犯として処刑されることが確定しながも強者としてふるまい、夜道襲われて死ぬ段になると震えて女の名を呼び続けた辛島、死にゆく体を抱えながら恩人に悪意をぶつける病人、この2人も強烈だ。無様だが生の感触があると思う。
対して主人公はどこか弱々しく、それが物悲しい。夜道でゴリラの物まねをし、強くなった気分を味わうシーンなどは特に胸にくる。強がってみるもののインテリー(辛島が好んだ表現だ)の枠から出ることはできず、人生を変えると思われた辛島殺しも中途半端な形でしか成しえなかった。
生きていると、これはと思う局面にぶち当たることがある。そこでどこまで必死になれるか、ずるくなれるかに人生の色々が詰まっていると思う。私はずるさに憧れるが中途半端にしかできない。それも、辛島を斧で打つどころかゴリラの物まねで精一杯だ。